ぱるちのものおき ver 2.0

主にLaTeXや数学のお話をするブログです。

a^a^a^a^a^a^a^a^...を【数式で】捉える(前半戦)


\displaystyle a^{a^{a^{a^{a^{a^{a^{a^{a^{a^{\cdots}}}}}}}}}}
今日考えるのはこんなのです。なお,今日の記事は数式しか出てこない予定ですので,目の保養としてこちらの参考記事を挙げておきます。
www.ajimatics.com

今回の記事で僕がやろうとしていることは,

   \displaystyle a^{a^{a^{a^{a^{a^{a^{a^{a^{a^{\cdots}}}}}}}}}}が収束するような a の値の範囲ってなんなんだい?

というお話です。

そもそもa^{a^{a^a}}の読み方が分からない

多分,「a(のa(のa(のa乗)乗)乗)」と呼ぶのがふさわしいでしょう。「aのa乗のa乗のa乗」ではありません。

厳密に数式を用いて定義するならば,

数列\{ a_n \}を,

   a_1=a,\qquad a_{n+1}={a_n}^a

という漸化式を満たすものとして,

   \displaystyle\boldsymbol{\lim_{n\to\infty}a_n}

のことを便宜上\displaystyle a^{a^{a^{a^{a^{a^{a^{a^{a^{a^{\cdots}}}}}}}}}}と書いている

といった感じです。例えば a=1 ならば,明らかに a_n=1 ですので,1^{1^{1^{\cdots}}}=1 となります。

また,非自明ですが a=\sqrt2 のときは,a^{a^{a^{\cdots}}}=2 が成り立ちます。

しかし,a=2 のときは,\infty に発散します。

というわけで,\sqrt22 の間にあると思われる,境界を探すのが,本記事の目標となります。

ちょっとだけ予備知識と準備を

次の事実を使います。


補題上に有界な単調増加数列は収束する。同様に,下に有界な単調減少数列は収束する。
基本中の基本ですが,証明は省きます。

また,次のように記号を設定します。

x を実数,n を正の整数として,関数の列 \left\{f_n(x)\right\}_{n=1}^{\infty} を,

f_1(x)=x
f_{n+1}(x)=x^{f_n(x)}\quad (n=1,\ 2,\ 3,\ldots)

と定義する。また,\displaystyle\lim_{n\to\infty}f_n(x) が存在するとき,その値を f(x) と書く。

さっきまでは a と書いていたものを,ここで x と書き改めました。理由は何となく,数列というより関数で考えたいからです。

また,かなり自明なことですが,次の性質を挙げておきます。(証明は容易なので省略します。)


補題すべての正の整数 n について,x\gt0 ならば f_n(x)\gt0

まずは \boldsymbol{x>1} のときから

まず,次が成り立つことを確認していきましょう。

正の整数 n に対して,x>1 ならば f_n(x)\lt f_{n+1}(x) となる。
正の実数 x,\ a\ (x>1) に対して,x^a\gt1 であることに気を付けて証明します。
(証明)
数学的帰納法による。n=1 のときは

   \displaystyle \frac{f_2(x)}{f_1(x)}=x^{x-1}\gt1

となり,f_1(x)=x\gt0 より f_2(x)\gt f_1(x) である。
次に n=k まで成立しているとする。
n=k+1 のとき,

   \displaystyle\frac{{f_{k+2}(x)}}{{f_{k+1}(x)}}=\frac{x^{f_{k+1}(x)}}{x^{f_k(x)}}=x^{f_{k+1}(x)-f_{k}(x)}\gt1

よって補題2より f_1(x)\gt0 だから f_{k+2}(x)\gt f_{k+1}(x) なので n=k+1 の場合も成り立つ。

以上より数学的帰納法から従う。◆

\boldsymbol{1\lt x\leqq e^{1/e}} のとき

唐突にe^{1/e} という数を取ってきました。
1\lt x\leqq e^{1/e} のときに f_n(x) はある値に収束する ことを示します。

そのために次を確認します。

すべての正の整数 n に対して,1\lt x\leqq e^{1/e} ならば f_n(x)\lt e となる。
対数を取ると示しやすそうです。
(証明)
数学的帰納法で示す。
n=1 のときは明らか。
n=k までで f_k(x)\lt e が成り立つと仮定する。このとき,f_{k+1}(x) の対数を取ると,

   \displaystyle\log f_{k+1}(x)=\log x^{f_{k}(x)}=f_k(x)\log x\lt e\cdot\frac1e=1

これよりf_{k+1}(x)\lt e が言えたから,n=k+1 のときも成立する。◆

今示したことから,

f_1(x)\lt f_2(x)\lt \cdots\cdots \lt f_n(x)\lt \cdots\cdots\lt e

となっていますので,数列 \{f_n(x)\}_{n=1}^{\infty}上に有界な単調増加数列です。よって収束します。

∴ \boldsymbol{f(x)} は,\boldsymbol{1\lt x\leqq e^{1/e}} においては存在する。

ちなみに,\sqrt2 の近似値は1.414,e^{1/e} の近似値は1.444ですので,x=\sqrt2 のときは収束することが分かります。

\boldsymbol{e^{1/e}\lt x} のとき

e^{1/e}\lt x のときは上界を持たない, つまり,f_n(x) は収束しない ことを示します。

つぎの式を目標に,頑張ります。

2以上の整数 n に対して,e^{1/e}\lt xならば f_{n}(x)-f_{n-1}(x)\lt f_{n+1}(x)-f_{n}(x) となる。
この不等式だけをみると,なんとなく平均値の定理っぽい証明ができるかもしれないと考えます*1
(証明)
n を2以上の整数とする。また,関数 \log x について平均値定理を適用する。つまり,\log x区間\left( f_n(x),\ f_{n+1}(x)\right)微分可能な連続関数だから,ある定数 c\in\left( f_n(x),\ f_{n+1}(x)\right) が存在して,

   \displaystyle \frac{\log f_{n+1}(x)-\log f_n(x)}{f_{n+1}(x)-f_n(x)}=(\log c)'=\frac1c

このとき,f_n(x)\lt c を用いて両辺に f_{n+1}(x)-f_n(x) をかけると次の不等式が導かれる。

   \displaystyle \log f_{n+1}(x)-\log f_n(x)\lt \frac{f_{n+1}(x)-f_n(x)}{f_n(x)}

この不等式の左辺については,

   \displaystyle \log f_{n+1}(x)-\log f_n(x)=\log\left(\frac{f_{n+1}(x)}{f_n(x)}\right)=\log x^{f_n(x)-f_{n-1}(x)}=\left(f_n(x)-f_{n-1}(x)\right)\log x

となるので,不等式は次のように書き換えられる。

   \displaystyle \left(f_n(x)-f_{n-1}(x)\right)\underline{\log x\cdot f_n(x)}\lt f_{n+1}(x)-f_n(x)

下線を引いた部分は \log x^{f_n(x)}=\log f_{n+1}(x) であり,これは十分大きい n に対して1より大きい数である*2。したがって,

   \displaystyle f_n(x)-f_{n-1}(x)\lt f_{n+1}(x)-f_n(x)

が成り立つ。◆

これは f_n(x) がある値に収束しないことを言っています*3。特に正の無限大に発散します。

∴ \boldsymbol{f(x)} は,\boldsymbol{e^{1/e}\lt x} においては存在しない。

すこし疲れたのでここで前半とします。

次回は,0\lt x\lt 1 での f(x) についてみていきます。後半のほうが長いです。そして,0\lt x\lt 1 のどこかに さらなる境界 があります。そのお話はまた元気な時に...

*1:これは大学入試で培った経験値ですね。

*2:f_{M}(x)\gt e が成り立たないと仮定して,e を上階に持たないことを示すことができます。

*3:もしも\displaystyle\lim_{n\to\infty}f_n(x)が存在すると仮定すると,\displaystyle\lim_{n\to\infty}|f_n(x)-f_{n-1}(x)|=0でなければならないことに矛盾する。