ぱるちのものおき2.0

主にLaTeXや数学のお話をするブログです。

a^3+b^3+c^3=d^3

今日の出発はこちらになります。(あれ?毎日高校数学してない?)


a,b,c,d0でない整数とする。a,b,c,d がこの順に等比数列を成すとき,

   a^3+b^3+c^3=d^3

は必ず成り立たないことを証明せよ。

これについてみていきましょう。今回はやや長めです。

まずはこの問題に解答を

以下のサイトの内容を知っていると,証明が少し読みやすくなると思います。*1今回は,ですます調ではないです。

ja.wikipedia.org

(証明)
 等比数列 a,b,c,d の公比を r とすると,b=ar, c=ar^2, d=ar^3 とおくことが出来る。(b\neq0 より,r\neq0である。)
 a^3+b^3+c^3=d^3 が成り立つと仮定する。このとき,

   a^3(1+r^3+r^6)=a^3r^9

である。a^3\neq0 より,

   1+r^3+r^6=r^9

\displaystyle r=\frac{b}{a} より,r有理数なので,r^3有理数である。\displaystyle r^3=\frac{p}{q} とおく。このとき,q>0 として,|p|, q は互いに素とする。*2このとき,

   \displaystyle \left(\frac{p}{q}\right)^3-\left(\frac{p}{q}\right)^2-\left(\frac{p}{q}\right)-1=0

この両辺をq^3 でかけて,

   p^3-p^2q-pq^2-q^3=0\quad\cdots\cdots(\ast)

(\ast)より,

   p^3=q(p^2+pq+q^2)

となるので,p q の倍数となるが,|p|, q は互いに素としたので,\boldsymbol{q=1}に限る。よって,(\ast) は,

   p^3-p^2-p-1=0

となる。この式を変形して,

   1=p(p^2-p-1)

より,1は p の倍数でなければならない。即ち,p=\pm1 である。しかし,p=1, -1 のいずれも (\ast) は満たされないので,これは a^3+b^3+c^3=d^3 が成り立つと仮定したことに矛盾する。
よって a^3+b^3+c^3=d^3 は成り立たない。(証明終)

で,僕は何が言いたいの?

  a^3+b^3+c^3=d^3 を満たす整数解 a,b,c,d って存在するの?

つまり,さっきの問題は a,b,c,d等比数列を成すならばNGでした。じゃあ,等比数列という条件を除いて,次の問題を考えます。


   a^3+b^3+c^3=d^3\quad\cdots\cdots(\#)

を満たす整数解 (a,b,c,d) をすべて求めなさい。

どれかが0の場合

(a,b,c,d) のうち,どれかが 0 となる場合を考えてみましょう。

どれか3つ以上が0の場合

例えば b=c=d=0 としますと,a=0 となるので,(0,0,0,0)(\#) の(自明な)解となります。

どれか2つが0の場合

例えば [c=d=0] としますと,a^3=-b^3=(-b)^3 となるので,(n,-n,0,0)(\#) の解となります。同様に,(n,0,-n,0),(n,0,0,n),(0,n,-n,0),(0,n,0,n),(0,0,n,n)(\#) の解となります。(nは整数)(この時点で,(\#)を満たす解は無限個あることがわかりました。しかしつまらない。)

どれか1つが0の場合

例えば d=0 としますと,a^3+b^3=(-c)^3 となります。これはフェルマーの最終定理n=3 の場合ですので,これを満たす(0でない)整数解は存在しません。

いずれも0でない場合

ここからが本題です。 (\#) を満たす整数解は無限個かもしれませんが,解の形には必ず規則性があるはずです。それを探す冒険をしましょう。

とはいえ, (\#) を満たす,非自明な整数解を未だ1つも見つけていません。それを見つけましょう。

等差数列ならば

もしもa^3+b^3+c^3=d^3を満たすa,b,c,dが等差数列ならば,どのような解があるかを検討してみましょう。

この等差数列の公差を s とします。(もちろんsは整数)このとき,b=a+s, c=a+2s, d=a+3s なので,

   a^3+(a+s)^3+(a+2s)^3=(a+3s)^3

この式を遊ばせてみますと,

   (3s-a)(3s^2-3as+a^2)=0

この 3s^2-3as+a^2 については,

   \displaystyle 3s^2-3as+a^2=3\left(s-\frac{a}{2}\right)^2+\frac{a^2}{4} \gt 0\qquad (\because a\neq0)

よって,a=3s がこの解を満たします。例えば,s=1 のときは,

   \boldsymbol{3^3+4^3+5^3=6^3}

です。初めて見つけた非自明な解がこんなに美しい姿をしていると,思わず微笑んでしまいます。

タクシー数

そういえばタクシー数1729は,

1^3+12^3=10^3+9^3

という形をしていたので,ちょっと変形して

(-1)^3+9^3+10^3=12^3

と,(\#) の非自明な解となります。1つの発見に。

断念

うーん。一般的な解を全て求めることはやはり難しいのか。

ここでまたEuler様が登場。どうやらEulerは (\#) の全ての解が,

\begin{array}{l}
   a=1 - (u - 3v)(u^2 + 3v^3)\\
   b=(u + 3v)(u^2 + 3v^2) - 1\\
   c=(u^2 + 3v^2)^2 - (u + 3v)\\
   d=(u^2 + 3v^2)^2 - (u - 3v)
\end{array}
で表せることを証明したようだ。[The Genius of Euler: Reflections on His Life and Work による。]

さらに,
d\neq1ならば,次のように表示できる解たちがある!n,m は任意の整数)
って書いてあるサイトを見つけた。

\begin{array}{l}
   a=3n^2 + 5nm - 5m^2\\
   b=4n^2 - 4nm + 6m^2\\
   c=5n^2 - 5nm - 3m^2\\
   d=6n^2 - 4nm + 4m^2
\end{array}

だれだこんな美しい方程式を見つけたのは?????

Ramanujan

あー寝よう。女神さま来ないかな。。。

参考:
www.mathpages.com

*1:この内容に,有利根定理とか,整数根定理とかいう名前がついているのを初めて知りました。

*2:たしか高校の数学の教科書って,2つの自然数に対して互いに素が定義されたはずです。そのため,絶対値記号を用いています。